内田絵梨
春眠暁を覚えず。休日はついつい寝過してしまいます。
今回のお話は「ぐっすり」の語源について。
なんでもぐっすりは「good sleep」の略だという説を小耳にはさんだのですが、本当にそうなのでしょうか?
「ぐっすり」とは
ぐっすりを辞書でみると、このように表記されています。
ぐっすり[副]
1. よく眠っているさま。
2. 残らずするさま。すっかり。
3. 物を突き刺す音を表わす語。ぐっさり。
大辞林 第三版より
なんだか物騒な意味も持っているようですが、我々が通常使うのは「1. よく眠っているさま。」ですね。
英語では「have a good night’s sleep」で「一晩ぐっすり眠る」という意味なんとか。この言葉からぐっすりができたのだと言われたら非常に説得力があります。
日本の書物における「ぐっすり」
ところが、「ぐっすり」という言葉は、鎖国中であった江戸時代にはすでに使われていました。
江戸時代(1790年)に書かれた『黄表紙・即席耳学問』という書物にはこのような一文が載っています。
『其身六十にあまる比は、人も知る金持ちとなりしを、ぐっすり息子に譲り』
この場合は「2. 残らずするさま。すっかり。」の「すっかり」という意味で使われていますね。
また、同じく江戸時代(1871年)に作られた歌舞伎の演目『四十七石忠矢計(十二時忠臣蔵)』には
『又ぐっすり呑めるぜ、おい旦那は御如在がねえな』
という台詞があります。こちらは「十分に」「しっかり」という意味で使われているようです。
この「すっかり」「しっかり」という意味から派生して「ぐっすり寝る」=「すっかり寝る」「十分に寝る」という使われ方をするようになったと考えられます。
そして後出しになってしまいますが、先に挙げた2つの書物より早い年代に刊行された雑俳『清書帳』には
『ちゃんと爰(ここ)へ来てグッスリと寝て』
という表記があります。まさに今私たちが使っている「ぐっすり」と同じ意味ですね。
徳川8代将軍吉宗の時代からあった言葉がまさかgood sleep由来の言葉とは思えないため、「ぐっすり」は日本に元々あった言葉で、たまたま英語に似た発音の表現があったと考えるのが妥当でしょう。
いかがでしたか? 「ぐっすり」の言葉一つでも、由来を調べてみると大変おもしろいですね。
また、「しっかり」や「すっかり」など、「ぐっすり」の意味を構成する言葉の語感が似ているのも興味深いです。
おまけ
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参考:語源由来辞典 / 日本語、どうでしょう?