内田絵梨
先日、横断歩道の塗りかえ作業を目撃しました。
道路工事はなんだかんだ毎日目にしていますが、そういえば横断歩道の塗りかえ作業を見るのは初めてだなあ、と。
そして、横断歩道は以前ははしご型だったなあ、と思いました。
今でも横断歩道のイラストを書けと言われたら多くの人がはしご型で書くのではないでしょうか?
そういうわけで、今日は横断歩道のお話です。
横断歩道の歴史
横断歩道の歴史は古く、その痕跡は2000年以上前に栄えたイタリアのポンペイ遺跡にもあります。
まあ、馬や馬車が通る道ができれば、それをより安全に横断する方法も提案されるでしょうし、歴史が古いのは当然といえば当然です。
ポンペイ遺跡では石が敷き詰められた馬車道があり、その両脇には歩道が一段上がって作られていました。
この馬車道は雨水を排水する役割も持っていて、馬車道が冠水した際に、両脇の歩道と歩道を横断するための飛び石が設けられていました。これが横断歩道の原型と言われています。
ちなみに、ポンペイ遺跡の馬車道は石と石の隙間に小さい大理石が埋め込まれていて、夜でも道が光って見えるようになっているとか。非常によく考えられた道路だったのです。
日本の横断歩道
日本で最初に横断歩道ができたのは1920年(大正9年)のこと。東京の錦糸町で東京市電(現在の東京都電)を横切るために設けられました。
この横断歩道は石灰粉で書かれ、当時は電車路線横断線と呼ばれていたそうです。
横断歩道表示が法律化されたのが1960年(昭和35年)のことで、このときはゼブラ模様が交互に配置されたデザイン。
わずか5年後の1965年(昭和40年)には、単純なはしご型のゼブラ模様に変更され、1992年(平成4年)以降は、はしご型のゼブラ模様から両端の側線がなくなった国際的なデザインが主流になっていきました。
はしご型から側線がなくなるメリット
側線がなくなることで得られるメリットは三つあります。
一つは雨水が溜まりにくくなることです。
側線があると塗料で囲まれた部分に雨水が溜まり、それによって歩行者や車が滑ってしまう危険や水はねが起こりやすい状況にありました。
特に雪国では、チェーンやスノータイヤによってアスファルトが摩耗することで、横断歩道の塗装とアスファルトの段差が大きくなり、雪解け水が溜まりやすくなってたのです。
このことから、はしご型から側線をなくす試みは雪国である北海道から行われ、全国に広がりました。
もう一つのメリットは設置が簡単で、補修も楽になることです。
側線がなくなることでもちろん使う塗料の量も書く手間も減ります。材料費と人件費を減らすことができるのです。
最後のメリットは側線がない方がドライバーから横断歩道がよく見えることです。
人間の目には側線がない横断歩道のほうが、かえって横断歩道が浮き上がって見え、視認性が向上するそうです。
横断歩道は側線をなくすというたった一つの工夫で、より安全に経済的に作られるようになったのです。