内田絵梨
普段なんとな~く使い分けている方向を表す「に」と「へ」。
どんな違いがあるのかを明らかにすることで、なんとなくを明確にしてみませんか。
「に」と「へ」の違い
・東京へ行く
・東京に行く
「に」と「へ」はどちらも格助詞で、「行く」という移動を表す動詞の到達点や方向を表しています。
一般的に「に」は到達する場所に焦点を当てた表現です。
「神奈川でも千葉でもなく東京という場所に行く」というニュアンスです。
一方、「へ」はそれよりも広い範囲で使われます。
到達点はもちろんのこと、そこに向かう経路や方向性にも焦点が当てられます。
そのためこの場合は、「東京方面へ行く」というニュアンスになります。
どうしてこんなに意味の似た格助詞があるのでしょうか。
「へ」の歴史
格助詞の歴史としては「へ」の方が浅く、元々「へ」は、道のほとりという意味の「道の辺(へ)」や山のほとりという意味の「山の辺(べ)」など、場所を表す単語について「その辺り」を表す「辺(へ)」という名詞として使われていました。
これが、奈良時代から平安時代にかけて格助詞的に使われだし、定着します。
この頃の「へ」は、移動の意味を持つ動詞と共に使われて、その動作の方向を表すものでした。
ところが、平安中期ごろから「へ」は、動作の到達点を表す格助詞「に」と同じように使われるようになります。
元来、動作の方向を表すだけだった「へ」が、到達点を表す「に」の用法に侵入したために、「へ」の方が用法が広くなったというわけです。
台風の進路はどう表す?
自然災害である台風が東京へ向かっている場合はどうでしょうか。
・台風が東京に向かっている
・台風が東京へ向かっている
台風の進路を伝える場合に重要なのは「向かう方向」です。
また、どこに台風が向かう到着点が決まっているわけではないので、どちらも使えはするものの「へ」の方が適切であると言えるでしょう。
「に」と「へ」の意味の使い分けは現代ではとてもあいまいですが、意識して使い分けてみるとより伝わりやすい日本語になるかもしれません。
おまけ
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この記事のようにより正確な言葉の使い方を意識し、日々受電・架電を行っています。
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