TOP / 言葉 2021.11.04

「天地無用」の意味とは? 間違いやすい運送用語

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天地無用

宅配便の段ボールに「天地無用」というシールが貼ってあった場合、その荷物をどのように扱いますか?
上下を逆にしないように気を付けて運びますか?
それとも、荷物の上下を気にせず扱いますか?

平成25年度の「国語に関する世論調査」では、本来の意味である「上下を逆にしてはいけない」と答えた人が55.5%。
本来の意味ではない「上下を気にしないでよい」と答えた人が29.2%。
「分からない」という人が9.3%という結果でした。

さて、ではなぜ本来の意味とは真逆の意味でとらえる人がいるのでしょうか。
まずは「天地無用」の意味と由来を見ていきましょう。

天地無用の意味と由来

天地無用を辞書で引くとこのように載っています。

てんち-むよう【天地無用】
上下を逆にしてはならないの意で、運送する荷物などの外側に表示する語。
明鏡国語辞典より

この言葉の由来は運送業者の専門用語で、元々は「天地入替無用」「天地顛倒無用」という言葉が使われていました。
「入替」は場所を反対にすることですし、「顛倒」は逆さまにすることなので、より分かりやすい表現だったことがわかります。
いつしか真ん中の動作を表す言葉が省略され、「天地無用」という短縮された表現が使われるようになりました。

もう少し言葉を分解して意味を見ていきましょう。
「天地」と「無用」は辞書ではこのように記載されています。

てん-ち【天地】
①天と地。「―創造」
②自分が生活し、活動する世界、世の中。「新―への旅立ち」
③紙・書物・荷物などの、上と下。「―無用」

む-よう【無用】
①役に立たないこと。いらないこと。「心配御―」
②してはならないこと。「立入り―」「天地―」
③用事が無いこと。「―の者,入るべからず」

この場合、天地は③の意味、無用は②の意味が該当します。
ただし、元々あった「入替」や「顛倒」が省略されているので「上下をしてはならない」と言われてもハテナマークが頭に浮かびますね。

天地無用をややこしくする「無用」の意味

また、天地無用の意味をより分かりにくくしているのが「無用」のその他の意味です。
①の「役に立たないこと。いらないこと。」で捉えてしまうと、「上下はいらない=上下は気にしなくて良い」という発想になってしまいます。
③の「用事が無いこと。」で捉えてしまうと「上下に用事はない=上下は関係ない」という意味を連想してしまいます。

動作を表す言葉が省略され、かつ、「無用」の意味が禁止以外にもあることから意味を間違いやすい言葉となっているわけです。

なお、現在、郵便局では配送員が荷物の取り扱いを誤らないよう「天地無用」シールは廃止し、「この面を上に」「逆さま厳禁」と書かれたシールが採用されています。

 

参考:文化庁広報誌ぶんかる(「天地無用」の荷物は,どう扱うか。)

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