TOP / 言葉 2021.11.18

人一倍は何倍のこと?

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人一倍

「人一倍がんばる」という表現がありますが、一倍というと×1。
つまり人と同じ、人並にがんばるって意味になるのではないの? という疑問はないでしょうか。
しかしながら、「人一倍」は「人より一層」という意味です。
なぜ人よりがんばることを「人一倍がんばる」というのか、その由来にせまります。

一倍は元々、二倍の意味だった

実は「一倍」は本来「×2」の意味で使われていた言葉でした。
一倍の一番古い用例は奈良時代のもので、そこから江戸時代までは一倍は「×2」、二倍は「×3」、三倍は「×4」という意味でした。
そもそも「倍」という言葉を辞書で引いてみるとこのように出てきます。

ばい【倍】
一. [名]ある数量を二つ合わせた数量。2倍。「―の分量」「―にして返す」
二. [接尾]助数詞。同じ数を重ねて加え合わせる回数を表すのに用いる。「三―」「一〇―」
デジタル大辞泉より

確かに、某ドラマで流行った「倍返しだ」という表現も、 やられた以上に手ひどく仕返しをすることを表す表現です。
辞書で書かれている助数詞の意味が「二倍」が「×2」、「三倍」が「×3」、「四倍」が「×4」に変化したのは明治時代のこと。
西洋の数学と合わせるために「倍」は「×(かける)」という意味にすると定めました。
これには当時の人も混乱したようで、明治8年には『太政官布告』で下記のように交付されました。

第百八拾三號
自今公文中總テ計算上一倍ノ稱呼ヲ止メ 從前ノ諸規則等ニ一倍ト記載有之分ハ二倍ト改正候條此旨布告候事
但譬ハ原金高一圓ノ二倍ハ二圓十倍ハ十圓ト計算候儀ト可心得事

簡単に読み下してみます。
(筆者は専門家ではないので表現に多少の誤りがあるかもしれません。ご容赦ください)


第183号
今後、政府や官庁の出す文書はすべて計算上一倍という表現をやめ、従来の諸規則などに一倍の記載があるものは二倍と改正することをここに布告します。
例えば金額一円の二倍は二円。十倍は十円と計算することをよく心得ておくように。


公式文書では「一倍」という表現を使うこと自体を止めてしまったのですね。
時代が下るにつれて明治政府の意向通り、「倍」=「×(かける)」という意味が浸透していきました。
今では助数詞の「倍」を江戸時代以前のようにとらえる人はいなくなり、名詞の「倍」や慣用表現の「人一倍」や「倍返し」に古来の「倍」の意味が息づくのみとなっています。

おまけ

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この記事のように言葉に向き合い、丁寧な対応を心掛けて日々受電・架電を行っています。
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参考:『悩ましい国語辞典』神永曉・著 / どれだけ知ってる? 漢字の豆知識(「人一倍」は人と同じ“努力”をすること?)

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