内田絵梨
今回は、知らず知らず間違って使っているかもしれない「たり」の表現についてご紹介します。
突然ですが皆さんは次の文章に違和感は覚えますか。
・先週末は本を読んだりテレビを見て過ごした。
実はこの表現は誤っています。
「たり」の使い方
「たり」を辞書で引くとこのように載っています。
たり〚接助〛
①《多く「…たり…たりする」の形で、対比的な語を使って》同類の動作・状態が繰り返し起こる意を表す。
[語法]「たり」を繰り返す形が規範的。「× 騒いだり器物を破損した人は罰せられます」→「○ 騒いだり器物を破損したりした人は罰せられます」
②《多く「(…たり)…たりする」の形で》動作・状態を例として挙げる。
[表現]ほかにも同類があるという含みで使う。また婉曲(えんきょく)に指示するときにも使う。「『ドアが閉まっているよ』『今日はお休みだったりして』」
明鏡国語辞典
「たり」は基本時に繰り返し使わなくてはなりません。
しかも、「飛んだり跳ねたり」「歌ったり踊ったり」など似た動作や、「暑かったり寒かったり」「泣いたり笑ったり」など同じジャンルの言葉を並列して使います。
この辞書では接続助詞となっていますが、辞書によっては並列助詞と記載されていることもあるのです。
なぜ繰り返し使わなくてはならないのかというと、誤解を避けるためです。
毎日新聞用語集には
・遊んだり学ぶのを手助けする
という文章を例に、「たり」を省略すると誤解が起きてしまう可能性があることを述べています。
確かにこの文章だと、「遊んだり学んだりするのを手助けする」と言いたいのか「遊んだり学ぶのを手助けしたりする」と言いたいのか、どちらかはっきり分かりません。
「たり」は省略しない方が良いと言えるでしょう。
そのため、先に紹介した文章を正しくするとこのようになります。
・先週末は本を読んだりテレビを見たりして過ごした。
例外的に「たり」を一つだけ使う用法として、「たり+する」の形で動作や状態の例えを使う用法があります。
この場合は副助詞的に用いられて、いくつかある事柄の中から一つの動作・状態を例示して、他の場合を類推させるときに使います。
例えば「車にひかれたりしたら大変だ」「休日は読書をしたりして過ごす」などです。
省略される並列表現
昨今では、この「たり」と同じように、本来は並列で繰り返し使うべき言葉が省略される傾向があります。
例えば「煮るなり焼くなり」などで使われる「なり」や、「洗濯とか掃除とか」の「とか」、「好きだの嫌いだの」の「だの」です。
言葉は常にゆれ、変化しているものではありますが、日常生活で使う際にちょっと気をつけてみるとよいかもしれません。
参考:NHK放送文化研究所(「~たり~たり」) / 日本語教師の広場(~たり(~たり)する) / 毎日ことば(「~たり、~たり」を省略しない理由) / 毎日新聞用語集