内田絵梨
ご飯をおひつや炊飯器から茶碗に移し替えることを何と表現しますか?
「よそう」? それとも「よそる」?
「盛る」や「つぐ」、「入れる」、「つける」などの言い方もあります。
今回はご飯を茶碗に「○○○」表現について調べてみました。
ご飯を「盛る」
古くから見られるのがご飯を「盛る」という表現です。
高く積み上げるという意味の「盛る」は、茶碗にご飯をうずたかく入れるイメージにぴったりです。
「山盛り」「てんこ盛り」という表現もありますね。
万葉集には有間皇子が詠んだとして
家にあれば笥に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る
という句が収められています。
家にいると器によそうご飯を、今は旅の途中なので椎の葉に盛ります。
という意味です。
有間皇子は飛鳥時代の皇族ですからいかに古くからご飯を盛るという表現が使われていたかが分かりますね。
ご飯を「よそう」
ご飯を「よそう」という表現は、「装(よそお)う」と同じ語源で「整える」という意味が根底にあります。
食べ物を器に整えて用意することを「よそう」と言うようになり、いつしか今のように食べ物を器に盛ることを指すようになりました。
この「よそう」という表現は10世紀頃には見られるようになっているようです。
ご飯を「よそる」
ご飯を「盛る」と「よそう」が混交して使われるようになった表現が「よそる」です。
そのため「盛る」と「よそう」よりは新しくできた言葉です。
新しいとは言っても、1886年に出版された『改訂増補 和英・英和語林集成』には「Yosoru ヨソル」とあるため明治時代には使われていたことが分かります。
ちなみに『改訂増補 和英・英和語林集成』は、ヘボン式ローマ字を広めたことで有名なジェームス・カーティス・ヘボンが編纂した日本最初の英語で書かれた日本語辞典(和英辞典)の第三版です。
ご飯を○○○の地域性
さて、ご飯を〇〇〇という表現には地域性があるようで、「盛る」という表現は北海道や東北地方でよく使われる傾向があるとか。
「よそう」は東京、千葉、関西地方。
「よそる」はそれ以外の関東地方。
「つぐ」は中国地方、四国地方、九州地方。
「入れる」は沖縄県。
「つける」は愛知県や岐阜県や静岡県のごく一部で使われるとのこと。
日本人の主食なだけに、表現の仕方に地域性があるのはとても興味深いですね。
おまけ
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参考:NHK放送文化研究所(ご飯を茶碗に「○○○」) / タウンネット(よそう、つぐ、つける… 日本全国「ご飯の盛り付け」方言マップがこちら) / 日本語どうでしょう(ご飯は“よそう”のか?“よそる”のか?)