内田絵梨
印判を押してもらうときには皆さんは「ご押印をお願いします」と言いますか?
それとも「ご捺印をお願いします」と言いますか?
今回は「押印」と「捺印」について調べてみました。
押印と捺印の違い
「印判を押す」という意味の言葉には「押印」と「捺印」があります。
元は「捺印」という言葉が一般的でしたが、「捺」の字が常用漢字ではないことから、「押印」が代わって用いられるようになりました。
そのため、以前の法令では「捺印」と記されていたものが、改正によって「押印」に変更になったりしています。
さて、意味自体に違いはない「押印」と「捺印」ですが、熟語としては「記名押印」「署名捺印」と表現されることが多いです。
署名捺印は署名に印判を押したもの。記名捺印は記名に印判を押したもののことです。
ここからちょっとややこしくなるのですが、先に存在した言葉は「押印」と「捺印」であるはずなのに、「記名押印」を省略したものが「押印」、「署名捺印」を省略したものが「捺印」という考え方も存在します。
そして、「記名押印」と「署名捺印」には証拠能力の優劣が存在するのです。
優劣は証拠能力の高い方から次の通りです。
1. 署名捺印(署名押印)
2. 署名のみ
3. 記名押印(記名捺印)
4. 記名のみ
「記名押印」省略したものが「押印」、「署名捺印」を省略したものが「捺印」だとすると、「捺印」の方が証拠能力が高く、「押印」の方が証拠能力が低いということになってしまいます。
しかしながら、よくよく4つを見比べると、優劣のポイントは「印判を押す」という行為ではなく「署名」か「記名」かが重要なようです。
署名と記名の違い
「署名」は「当事者本人が氏名等を手書きすること」です。
「記名」は「自署以外の方法で指名等を記載すること」を指します。そのため、代筆やゴム印、印刷した氏名情報は記名になります。
手書き、という条件が付いているということは「署名」は筆跡鑑定が可能であるということです。
ちなみに、民事訴訟法第229条には「文書の成立の真否は、筆跡又は印影の対照によっても、証明することができる」と表記されているため、手書きであることはかなり重要です。
本人確認としての筆跡鑑定ができる「署名」と、誰にでも複製可能な「記名」では証拠能力に違いが出るのは明白ですね。
まとめ
ここまで「押印」と「捺印」について紹介してきましたが、意味自体に違いはないこと。
しかしながら「記名押印」と「署名捺印」には証拠能力の差があることが分かりました。
言葉はコミュニケーションをとるための道具にすぎません。
対話者同士の混乱を避けるためにも「押印」は記名押印のシーンで、「捺印」は署名捺印のシーンで使う方が良さそうですね。
おまけ
当社はbeecallというコールセンターも運用しており、24時間365日対応しています。
この記事のようにより正確な言葉の使い方を意識し、日々受電・架電を行っています。
ご興味のある方はぜひ、beecallのサイトもご覧ください。
参考:CLOUDSIGN(押印とは?捺印との違いや印鑑による契約書の押印に関して知っておくべき法律用語まとめ) / 電子印鑑ならGMOサイン(押印とは?捺印との意味・法的効力の違いはあるのか?) / ShachihataCloud(混同しやすい「捺印」と「押印」の違いとは?今更聞けない印鑑の基本を徹底解説) / 企業法務リーガルメディア(署名捺印・記名押印の留意点) / 企業実務ONLINE(意外に知らない?「捺印」「押印」の意味と効力) / J-NET21(意外と知らない契約書の基本(1) 契約書への押印の仕方)