内田絵梨
感動の東京マラソンから早二週間。プロジェクトの立役者たちにインタビューを行いました。
あの日あの時、何を思い何を願ったのか。赤裸々に語った真実とはいかに……。
※インタビュイーまゆちゃんとインタビュアー内田は歳が近いため、今までのインタビューより口調が少しくだけております。
ランナー まゆちゃんの場合
事前準備について
――東京マラソン、完走おめでとうございます!
はっはっはっはっは!(笑)
ありがとうございまーす!
――当日迎えるまでに考えていたことや準備していたこと、気をつけていたことは何ですか?
考えていたことは、ひたすらに不安しかなかったよね。
完走できるのかどうかっていう不安。
――1ヶ月前にお台場マラソンで20キロを走りましたよね。
走った。
――あれ以来、ハーフマラソン以上の距離は。
全然やってない。
ましてや、会社のジョギングも超サボってたから。
――そうですよね。お台場マラソンで一回燃え尽きて、1月2月はあまり練習してなかったイメージです。
そうそう。2月に入って会社のジョギング(4キロ)を3、4回かなあ?
本番前に最後に走ったのが2月21日で、そっからはもう走らず。
あれ? お台場マラソンいつだったっけ?
――1月21日です。
そう! ここで、「やばい。筋力がないから足が耐えられん」っていう話になって。
「ちゃんと筋肉つけるために練習しよう」ってなったんだけど、結局1月はその後に1回くらいしか走ってなくて。
2月も3、4回だから全然……練習量としては全くなく……。
――計4、5回くらい。
うん。筋トレもしてなかったから、本当にただ、ひたすらひたすら不安だったんだよね。
「あ。やばーい」と思って。
「今更ながらちゃんと練習しとけばよかった」っていう風に、こう。本番が近づくにつれてなっていって。
――気をつけていたことは?
気をつけてたことでいったら、お酒を抜いてた!
――おっ! いつくらいから?
えっと。いつだっけ?
――河口さんからの勧めですか?
そうそう。河口さんが「お酒をほとんど抜いてる」っていう風に言ってて、「あ、抜いた方がいいんだ」って思って。
最後に飲んだのがね……たぶん1週間くらい前だよ。
2月18日が最終で、そっからもう「お酒飲むのやーめよ!」って言って飲むの止めて。
――途中で辛くなったりはなかったですか?
うん。まあ、でも、そうだなあ……。
結局、飲み会とかあったりしても飲めないっていうのは辛かったなあ。
――雰囲気にのまれて一杯くらいいっか! と思っちゃいそうですけどね(笑)。
そう。思っちゃうんだけどね(笑)。
でも「これ飲んで完走できなかったらやだ!」って思いが強くて飲まなかったね。
あとは、本番前一週間に炭水化物? エネルギーに変わるもの! を、すごい取るようにはしてた!
――それから、前日にクマガイ室長がテーピングの巻き方などを共有してましたが。
あ! 前日、テーピングをしに行った!
――えっ?! しに行った?
接骨院に行って!
LINEで河口さんが「接骨院とかに行ってやってもらった方がいいよ」って言ってくれてて。
――接骨院……専門家ですもんね。
そうそうそうそう。
だから、近所の接骨院で土曜日にやってるところを探して、電話して。
「すみません。明日東京マラソンに出るんですけどテーピングしてもらえますか?」って言って、してもらった!
――ガチガチに足を固定したまま寝たということですか?
うん。でも、そんなにガチガチではなかったよ。
足首と膝だけだね。やってもらったのは。
だから当日はそんなに……。
痛かったけど、(お台場マラソンで)20キロ走ったときみたいな「痛くて走れない」っていうのはなかったんだよね。
「テーピングのお陰かなあ」って勝手に思ってる(笑)。
↑応募メンバー | ↑まさかの当選 |
焦りとの戦い
――当日、走っていて感じたことや、きつかったことは何ですか?
まず、最初!
スタートを待っている間に、1時間くらいずっと日陰に居させられたせいで、スタートを切ったあとくらいに河口さんと「トイレに行きたい」っていう話になって。
「元気な内にトイレに行っておいた方が巻き返しもできるから」って、コンビニに入ったんだけど、コンビニのトイレだからさ、1個しかないわけよ。
で、既にまあまあ人が並んでたわけ。
――わあ……。
そこで20分くらいロスったんだよね。
で、かつ、ホラ! スタート時間もさ、先頭集団は9時10分スタートだけど、あたしたちが実際にスタート地点に着いたのが9時半くらいだったの。
だから、トータル40分ロスしてるわけよ。
で、飯田橋の関門が10時半だったから……。
――ヤバイですね。関門が締まるまでの時間が。
そう。たぶん、2キロくらいのところでトイレに行って、飯田橋の関門が5.6キロ地点で。
私がトイレを出たのが10時5分とかそれくらいだったのよ。
だから、残り3.6キロを25分以内に走らなきゃいけなくて。
――1キロ7分ペースでも間に合わない!
あたし、結構余裕ぶっこいてたんだけど、後から来た河口さんに「ちょっとスピード上げたほうがいいよ」って言われて。
「え?! もう最初っからスピード上げるんスか?」って(笑)。「まじで?!」って。「同じペースで走ればいいんじゃなかったの?」って。
そこで気持ちの焦りも出るしさ。
そこがまず1個辛かったね。
結局、関門過ぎたのが足切りの時間の7分前とかだったんだよね。
――えー! ギリギリかつ、ハイペース!
そこはまだ走り始めだから良かったんだけど、問題は次の関門で。
次の関門が9.9キロで、11時までに通過しないといけないっていう。
――どうかしてるぜ!
(笑)。
超どうかしてるでしょ?
収容関門の時間を一覧でぱっと見たときには気付かなかったんだけど、前半の制限時間が結構キツキツなスケジュールで。
あたし自身は、数寄屋橋交差点(30.1キロ)までの関門が、本当にギリギリで。
――ちなみにどれくらい?
数寄屋橋の関門が13時55分に締まるんだけど、あたしが通過したのが13時50分くらいだったんだよね。
――うわー! ほんとにギリギリ!
そう。だから、みんなのLINEで「まゆちゃんが収容された」みたいなフラグが立ったのが、たぶんこの辺なんだよね。13時55分から14時35分くらいの間で。
ここまでが本当にギリギリだったわけよ!
ずっと時間気にしながら走ってた。
――辛い。そんな練習してないですもんね。
そう! してないじゃん! そんな練習(笑)
で、最初の方は気にしないようにしてたのよ、時間。焦っちゃうから。
でも、周りの沿道の人がさ、「あと○分でしまっちゃうよー!」とか普通に言ってくるわけ。
――それは焦りますねー。
「いや、ちょっと待って待って」って(笑)。
そこで焦らされたから、ほんとに30キロくらいまでは心に余裕がなかった。
――30キロってほぼ終わってる地点ですもんね。
まあ、確かにそうだよねえ。
でも、そっからも大変だったんだよねぇ。
30キロかを過ぎたくらいから、もう走れなくなっちゃって。
――確かに39キロ地点で応援したときは「もう走れな~い!」って言ってらっしゃいました。
言ってたでしょ?
「もう無理だ。走れん!」ってなっちゃって。ほっとんど歩いてたの。
でも、止まりたくなかったから。
沿道のれい子さんも「アイシングする?」とか言ってくれたんだけど、「いや、これで止まったら、たぶん無理だ」って思って。
「これはもう突き進むしかない」っつって。
――でも、普通に走るより早いくらいの早歩きでしたもんね。
そうそうそう。
なるべく早く歩くようにはしてた。
――給水所とかでお水を飲んだりはしたんですか?
飲んだ飲んだ飲んだ。
でも、あたし、補給のパンとかバナナとかは一切食べてない!
なんか、のどに詰まりそうだし!
――むせそうですもんね。
そう。30キロくらいで吐きそうになっちゃったのよ。なんか分かんないけど、謎に気持ち悪くなっちゃって。「うわ゛、なんか吐きそう゛!」みたいな。
でも、動いてるからのどは渇くしさ。とりあえず水とかポカリとかは「あったら飲もう」くらいの気持ちで飲んで。
あ、みかん! は食べたね!
――みかん!
みかんは全然食べられた!
あと、バッグに入れてたちっちゃいゼリーは「食べないとスタミナ切れになるな」と思って食べたんだけど、バナナ味で超甘くて。それでまた気持ち悪くなっちゃって。
――うわあ。
でも、食べないとスタミナ切れるし、無理やり水で流し込んで歩いてたなあ。
――壮絶ですね。
それから、同じコースを折り返すところが結構辛かった。
向かいの人はさ、もうぐるって回って戻ってきてるわけじゃん。
――自分が今走ってる道を終わって帰ってきてる人ですもんね。
キロ毎に出てたじゃん?「今○キロだよ」みたいな看板。
例えば自分は今32キロなのに、向かいの車線を走ってる人は39キロっていうのが見えて。
「えー……これ……。今、私32キロでしょ? こっから反対車線に行くまでにあと7キロもあるの?」みたいな。
――車線の間を抜かしてショートカットしたいくらいですよね!
そうそうそう! そうそうそう! ほんとに!
それが辛くて。
あと、20キロから35キロくらいまでは沿道の人とかがハイタッチを求めてくるわけよ。
――あー……。
でも、私、イライラしちゃって。自分に余裕が無かったから。
沿道の方には行かないようにしてて。
――道路の内側を走ってたんですね。
だから、25キロくらいの地点で、タケムラさんとササモリさんとワタナベちゃん(グッドクロス応援団)とかが応援してくれてたみたいなんだけど、全然気付かなくて。
余裕が復活したのは35キロ過ぎてからじゃない? たぶん。
あと7キロくらいって思ったら……。
――元気が出てきた!
うん。それと、関門の制限時間にゆとりがでてきて。
歩いてたけど、関門が締まる30分前に通過できたりとかしてたから「焦らなくていいや」って余裕が出てきた。
もしかしたら、東京マラソンの関門はそういう風にできてるのかもね。
後半になるとみんな、スタミナが切れるから、あえて余裕を持って設定してるのかな。
↑初練習 | ↑最後の練習 |
走り終えて
――見事ゴールした感想を教えてください。
すごく残念だったのが、ゴールのとこって関係者と参加してる人しか入れなかったわけよ。
私のイメージとしては、ゴールのところにはみんながワーっといて。
――24時間テレビみたいな?
そう。でも、そうじゃなかったのよ。
丁度1キロくらい前の通りは人がすごいいっぱいいて、そこでは英雄気分で歩けてたんだけど、肝心のゴール地点のとこが参加した人しか居ないから、あっさりだったのよ。
スタスタスタスターって行って、「あ。終わったー」って(笑)。
「あれ? こういう感じなんだぁ」みたいな。
で、終わったら終わったで、即行で日比谷公園の方に流されて。
超足痛いのに、1.2キロくらい歩かされてさ。
――あれはクールダウンも兼ねてるんですかね?
なんじゃない? たぶん。
クールダウンどころの騒ぎじゃなかったけどね。あたしと河口さんは。
「足が痛いのに何でこんなに歩かせるんだよ!」つって。
――預けてる荷物もないのに(笑)。
そう。だから、あんまり……。なんか感動っていう感動はなかったんだよね、正直。
「あ。やっと役割果たした。しゅーりょー。」みたいな、そんな感じ。ほんとに。
――ゴール後はどのように過ごされましたか?
とりあえず体が痛すぎて。特に足ね?
みんながのぼりに使ってた棒を持って歩かないと、ほんとにもう、無理で。
――足ってどの辺が痛かったんですか?
全部! 足の付け根からつま先まで!
ほんとに足の筋肉という筋肉がボロボロになってる感覚?
ブチブチブチーッって切れて。
――確かに、初心者の人がフルマラソンを走り終えると、3週間くらいは体の組織が戻らないって言いますよね。
そう。だから、どうしていいか分かんない感じだよね。
――食欲は戻らなかったんですか?
終わった直後は全然食べたくなかった。
マラソン終わって、社長にわがままを言って「私の家まで送ってくれ」っていう話をして、社長が車を会社に取りに行ってる間にみんなで軽くお茶してたんだけど、そこでも全然。飲み物しか飲みたくなくて。
ただ、テンション的には全然元気だったのね。足は超痛かったけど。
自分の体が心の中のテンションにまったく追いついてなくて。
気分的には、河口さんみたいに、終わって「酒飲むぞー!」ってやりたかったんだけど。足がね。
――翌日は休日でしたがどう過ごされましたか?
翌日はほとんど寝たきり生活だった。
――(笑)
いや、びーっくりした。
当日家に着いたのが20時半くらいで、お風呂に入ってすぐ21時くらいに寝て。
起きたのが8時とか9時とかで。
で、起きた瞬間に体が鉛のように重くて。足は何してても痛くて。
伸ばそうが曲げようが、何してても痛くて。
起き上がれなかったのよ! ほんとに!
だから翌日はベッドの上で生活してた。
――その次の日は起きられたんですか?
休みの次の日は、直後に比べたら全然動けたんだけど。
――出社……。
出社だったよ! でも、相変わらず痛いからさ……。
あたし、普段は歩くの早いんだけど、その日はよたよたとしか歩けなくて。
普段だったら駅まで5分で着くところを、10分~15分くらいかけて移動したよ。
――五反田駅からグッドクロスまでも結構距離がありますもんね。
そう。だから超恥ずかしかったよ。
「どうしたんだろう、この子」みたいな目で見られて(笑)。
――昨日は高橋治療院さんに調整はしてもらったんですか?
やったやったやった! あれ、すごいね! 足!
何もゴリゴリとかされてるわけじゃないのに、何で痛みがなくなるんだろう?
――催眠術かな? って思いますよね。
そうそうそうそう。ほんとに!
タウトニングだっけ?
仕組みの意味は分かんないけど、だいぶ楽になった。
――走る前も高橋治療院さんに調整してもらったんでしたっけ?
前?
――あ。できなかったんだ! 時間の調整がつかなくて。
そうそう。
でも、あんな感じの施術だと思ってなかったから、「マッサージでもみかえしがあったら嫌だな」って思ってて。
結局、走る前は他のマッサージとか整体にも行かなかったんだよね。
↑完走 | ↑ツーショット |
「走る」ということ
――またマラソンイベントがあったら走りたいですか?
いや、フルマラソンはいいや。
――「フルマラソン」はいいや?
(笑)。
いや、分かんない。
みんなには「走った直後だから嫌だと思うんでしょ? 半年とか1年経ったら走りたくなるんじゃない?」とか言われるけど。
「うん。ないね!」と、あたしは、今は思う。
――ハーフくらいだったら?
そうね……。ハーフか……。
――10キロ!
10キロとかだったら、まあ。
――でも、自分から積極的には走らない、と。
そうね。自分から積極的にっていうのはないかもしれない。
――でも、走ることに対するハードルは……。
いや、だいぶ下がったよ!
――(笑)
だって走るの超嫌いだったもん。ほんとに(笑)。
超嫌いだったところを、(東京マラソンに)当たっちゃって、奮い立たせて、やったって感じだけど。
おかげさまで走ることに対しての抵抗感は無くなったから。
かつ、走ることによって健康になった気になれるじゃん?(笑)
――自分の体に良いことしてる気にはなれますね。
そうそうそう。
あたし、今まで運動とか全くしてこなくて。
「このままでは体調が思わしくなくなってしまう」って思ってて。
「ジム行こうかな」「ヨガ行こうかな」と思ってはいたんだけど、なかなか行動に移せなくて。
でも、今回マラソンしてみて、走ることはそんなに嫌いではなくなったから……。
――すごい変化ですね。
ほんとだよね!
「趣味:ランニングです」とまでは言えないけど、「ちょっとずつ走ったりした方がいいのかな」とは思う!
だから今、「あなたは健康のために何するの?」って言われたとして、第一に思いつくのはランニングだね。
――じゃあ、できる範囲で走っていけたらいいですね。
靴も買ったしね!(笑)
もったいないじゃん! せっかく買っていただいたのに使わないのは、ね。
――ちなみに、完走賞金3万円の使い道は?
全然、何にも考えてなかった。
何に使うんだろ?
これといって欲しい物無いしな。
食費とか飲み代かな?
――たかられますよ!(笑)
やばい(笑)。
欲しい物ができたときに使おうかな。
――是非そうしてください。本日はインタビューにお答えいただきありがとうございました!
↑靴選び | ↑相棒 |
飲み会にて
――カセさーん! そういえば、社長や河口さんが「人生観が変わったんじゃないか」とおっしゃられてますが、どうですか?
え?
ないね。全く変わってない!(笑)
東京マラソンプロジェクト、これにて
→END?
→to be continued?