植村明美
明日は中秋の名月
名月をとってくれろと泣く子かな
うえむらは趣味の俳句を始めて間もないころ、「名月」「十五夜」という言葉は、旧暦8月15日の夜の月だけにしか使えないと聞いて、かなり驚いた憶えがあります。
いくら8月14日の月が美しかったとしても、真冬の月が美しく輝いていてもこの言葉は俳句の季語として他の日の月には使えないのです。
旧暦8月15日
そんな特別な月、旧暦8月15日に見るお月さまは中秋の名月といわれ、今年は10月4日、明日です。
元々お月見は、中国から伝わってきた習慣で、宮中で広まり、行われていたものです。それを段々と庶民が真似をするようになったようです。
中秋の名月は秋の真ん中にでる月のことであり、8月は旧暦では秋だったため秋の中に出現する美しい月ということでそのように呼ばれています。
現在の暦とは1ヶ月程度のずれが生じますので、大体9月中頃から10月上旬になります。
お供えもの
中秋の名月にお供えするものとしてはお月見だんごと里芋、そしてススキ。
お月見だんごは月を象った丸いもの、ということで、収穫物への感謝をこめて、また、里芋は収穫物への感謝を表して、ススキは稲穂に似ているのと、魔除けになるということから飾られます。どれも共通するのは収穫物への感謝の念です。
米や芋の豊作を願ってということと、空が澄んで美しいこのころに、人々が月を見て色々な思いをはせたのではないでしょうか。
満月とは限らない
また、中秋の名月=満月とは限りません。
今年の中秋の名月は、実は新月から13日目の月。満月は2日後の10月6日です。
新月から満月になる周期がきっちり15日ではなく、また、月の動きも綺麗な円を描くのではなく、幾分誤差が生じることなどからですが、ほぼ満月に近い丸いお月さまを見ることはできます。
月がきれいですね の話
さて、この中秋の名月について調べていましたら、月にまつわるちょっと素敵な別の事を知りました。
数年前にテレビやネットでは話題になっていたようですが、夏目漱石が英語教師をしていた時に、I love you.を「我君を愛す」と訳した学生に対して、「日本人はそんなことを言わない。月がきれいですね。と訳しておけばよいのだよ。」と言ったとか言わないとかという説があるそうです。
漱石がそういったかどうか真偽のほどは確かでないにせよ、話題になったということは、I love youを「月がきれいですね。」というということ、直接愛していると言うのではなく、そっと寄り添い、空を見上げ、同じ美しい物を見て愛情を確認するということに日本人の奥ゆかしさや、美徳とする気持ちが今の日本人にもあるということにちょっと嬉しくなりました。
そして「月がきれいですね。」と唐突に言われたことは無かっただろうか。いや、あって欲しいと、遠い記憶を慌ててたどってみましたが、いくら思い出しても無いものは無いと悟った次第です。
天気予報では明日は全国的に晴れるところが多いようです。
年に1度の中秋の名月。これが9月ですと雨の日に当たることも多いので、綺麗な名月を見られる絶好の機会をぜひ、お見逃しなく。