植村明美
2020東京五輪から正式種目となった競技スポーツクライミング。
道具に頼らず自己のテクニックと技で岩を登るフリークライミングが進化していく中で次第にスポーツ性を強調したものが求められるようになりました。
登山でのクライミングが山の頂上を征服することを目的とするのに対し、スポーツクライミングはインドアでのフリークライミングが発展したもので、登ること自体を楽しみとするところから派生しており、自然の岩場に代わるものとして人工ホールド・スタンスを利用して登っていきます。
スポーツクライミングにはリード、ボルダリング、スピードと3つの種目がありますが東京五輪ではこれら3種目を1人でこなす複合が採用され、いっそうハードな内容となっています。
ここではまず3つの種目それぞれの説明をしていきましょう。
リード
6分の制限時間内に高さ12m以上の壁のどの地点まで登れたかを競います。安全のために選手はハーネスを着用し、ピレイヤーと呼ばれる人が持った地上で確保されたロープをクイックドロー(ロープをひっかける器具)にかけながら登っていきます。
クイックドローにロープをかけることで上へ上へと登っていき最後の地点にロープを掛けると完登とみなされます。途中で落下した場合はそこで終了となり再トライはありません。
持久力が必要とされる種目です。
ボルダリング
ボルタリングの語源は岩。高さ5m以内の壁に複数のボルダー(岩場に見立てたコース)が設けられており、制限時間内にいくつ登ることができたかを競う競技です。
トップのホールドを両手で保持することができればそのコースはクリアしたと見なされます。
選手はロープなしの身一つで壁と岩に挑みます。落下した時のために厚さ50cm程度のマットレスが敷かれています。
体力だけでなく途中から手前に折れている状態のオーバーハングになっていることも多いため、柔軟性も必要であるし、攻略するうえでの判断力や思考力も重要となる種目です。
4本もしくは5本のコースに4分または5分の制限時間で挑みます。間には休息が設けられます。
他の選手の登る様子を見ることは大変有利に働くため、選手は先に登る選手の様子を見ることはできませんが、オブザベーションと言ってコース自体は見て攻略法や手順を考慮する時間が設けられています。
勝敗は制限時間内に登頂した数で決まりますが、同じ選手がいた場合はゾーンと呼ばれている高さに達した数で決まります。それでも同点の場合は完登するまでに何手かかったか、ゾーンに達するまでに何手かかったかをプラスして決定しますので、早く上迄登るだけでなく、頂上までいかに最短のルートで登るかなども重要となってきます。
スピード
高さ10mまたは15mの95度手前に傾斜した壁に世界共通の決まったコースが設置されています。そのコースをいかに早くよじ登るかを競うもの。
2人の選手がホールドを配置した垂直にそびえたつ壁を同時に登り、15mの高さにあるスイッチを先に押したほうが勝ちとなりフライングは1度で失格となります。
男子で5~6秒、女子で6~7秒でゴールする、文字通りスピードを競う種目です。
複合
来年の東京オリンピックでは以上3種目をひとりでこなす複合で勝敗を争います。
他の選手の登る様子を見ることは攻略する上で選手にとって大きなプラス要素になるため、自分が登る前の様子は見ることができない「オンサイト方式」です。
2017年開催のアジアユースの大会ではスピード、ボルダリング、リードの順に各種目が実施され、それぞれの種目の順位の掛け算で複合種目の順位が決まるという競技方法でおこなわれました。オリンピックでもこのルールにのっとって行われると思われますが、それぞれ別に行ってきた競技を1人が行うということで、各選手とも種目ごとに得意、不得意もあり、最終まで予測のつかない展開となることが予想されます。
日本は男女とも世界でもトップレベルの実力で、特にボルダリングは強く、複合でもメダル獲得が期待できます。
既に強化選手は発表されていますが、オリンピック代表の選考は以下の大会となります。
1.世界選手権
(2019年8月11日~21日/東京・八王子)
2.オリンピック予選大会
(2019年11月28日~12月1日/フランス・トゥールーズ)
3.アジア選手権
(2020年4月27日~5月3日/岩手・盛岡)
4.第3回コンバインドジャパンカップ
(2020年5月16日~17日/開催地未定)
これから1年かけて最終的に代表が選ばれるわけですね。強化選手は美男美女ぞろいという噂も聞いていますし、目新しいスポーツですので、今後益々注目される競技といえそうです。
出典、参考:公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会HP
https://www.jma-climbing.org/rule/