内田絵梨
感動の東京マラソンから早2週間。出場者にインタビューを行いました。
あの日あの時、何を思い何を願ったのか。赤裸々に語った真実とはいかに……。
完走の感想~れい子さん~
事前準備について
――れい子さん、完走、おめでとうございます!
ありがとうございます。
―― さっそく色々振りかえっていきたいと思うのですが、まずは当選したときのことを教えてください。
あの日は、前日にキリマンジャロから帰ってきて、くたくたの状態で這うようにして出社したんですけど……まさかですよね!
本当、笑っちゃいます。
くたくたでボロボロのところに追い打ちをかけるような。
――(笑)。まさか自分が当たるとは思ってなかった?
思ってなかったというか、考えてなかったですね。
――一番最初に東京マラソンの応募を企画したのはれい子さんですよね?
ふふふ。最初に企画したときは、絶対自分は当たらないっていう自信があったよね。
で、誰か当たったらちょっとおもしろいなって思ってました。
今考えると鬼だね! その罰が当たったんだと思います。
――そんな中、当選して当日迎えるまでに考えていたことは何ですか?
当たってからはずっとテンション低かったです。
でも、ハラダ社長が引っ張っていってくれたから、やっぱり社長はすごいなって。
練習も「やらないで済めばいいな」って思っていたのが、社長は着替えてやる気だったのでやらざるを得ず(笑)。
たぶん、私一人が走るのがかわいそうだと思ってチャリティ枠に自ら飛び込んでくれたんじゃないかな?
――確認しておきます(笑)。
もしかしたら私が勝手にありがたがってそう思ってるだけかもしれない(笑)。
――当日の朝はどんな感じでしたか?
一番心配だったのがトイレだったんですよね。
――今回走っている最中はトイレにはいきましたか?
走ってる最中はいかなかったんだけど、やっぱり去年の加瀬ちゃん(前回東京マラソンを走った社員)がトイレで20分ロスしちゃって、足切りの関門までギリギリだったじゃないですか。それは避けたくて。
当日はたまたま降りたのが新宿駅の南口だったのかな?
本当は西口に集まるんですけど。
おかげでトイレが空いていたので、すごいラッキーでした。
それが一回目のトイレ。
――なるほど。
そしてスタート地点に着いたらまたすぐにトイレの列に並んで、また30分後にトイレ!
別に行きたいわけじゃなくて、恐怖で。
――(笑)。寒いですしね。
当日の朝は寒さ対策とトイレ事情ばかり考えてました。
走る走らないよりも、それだけ!
むしろ走ることは自分の中で考えないようにしてました。
――「これは絶対持っていこう」と思っていた物はありますか? 時計は新調したんですよね?
ああ、あれは社長がプレゼントしてくれたんです。
――そうなんですか?!!
それもたぶん私のテンションがすごく低かったからだと思います(笑)。
ペース配分を考えながら走れるし、アスリート気分になってがんばれるでしょ? って。
――実際に当日は、時計を見ながら走ったんですか?
見ましたね。あと、ペースが乱れると自動で音で知らせてくれるようにしてました。
やっぱりそういうのがないと、最初にすごく飛ばしちゃって。
いつもは1km、7分半~8分くらいのペースで走ってたのに、5分とか6分くらいのペースで走ってたから。
もう自分の感覚だけじゃ分かんないんですよね。
――じゃあ、時計のおかげで最初から自分のペースで走れたんですね。
うん。あとは、河口さん(前回東京マラソンを走った社員)が作ってくれたペース配分表! 虎の巻!
あれはポケットに入れて、重要地点は全部手に書いてました。
気持ちを落ち着かせるのにすごく役に立ちましたね。
――食べ物などはどうですか?
グリコのキャラメル!
――グリコは結構歯にくっつくイメージがあるのですが。
なんか、グリコーゲンが持久力を高めるみたいですよ。
「信じる者は救われる」じゃないけどそれを信じて持ってました。
あとは足の攣らない漢方薬と、ロキソニン。ゼリー。スポーツ羊羹。
持ち物としてはそれくらいですかね。
あ!!!
――(驚)。
あと、感動秘話として、高校の後輩と「縁起物の巣鴨の赤いパンツを履いて走る」って約束してて。後輩は赤いパンツで応援してくれることになってて。
スタート前にお互いちゃんと履いている画像を送り合いました。勝負パンツです。
それが良い結果を招いたと思います。
来年は社長に赤いパンツを送ろうと思います。
――(笑)。すてきですね。ぜひお願いします!
大会への対策について
――いままでに出た大会できつかったことや自信になったことはありますか?
事前のマラソンは、本当に距離を見るために走っていたようなものだったので。
――「走り切れればいっか」みたいな?
そうそうそう。「途中歩いてもいいからゴールできればいいや」っていう思いでした。
実際にそれが東京マラソンでも生きましたね。
でも20kmまでは走れるんだけどそれ以上が未知で(笑)。
――一昨年からハーフマラソンは走ってましたもんね。
うん。でもハーフはハーフできついし、10kmは10kmできついし。5kmは5kmできついですよね。
――結局どれだけ走ってもきついと。
そうですね。
――社内で行った筋トレはどうでしたか?
練習初めてすぐに腰が痛くて病院にいったんですね。そこで、「まずは体の筋肉を付けないと走っちゃだめだよ」って言われて。
だから筋トレは良いきっかけになったと思います。
――腰痛は結果として少しは緩和されたんですか?
初めて1ヶ月後くらいにすごい体調をくずしたんですね。
それが治まってきてからは良くなったと思います。
走るのは悪くないと思うんですよね。 適 度 な 走りは(笑)。
――適度なやつは(笑)。
マラソンはやっぱり体に悪いんじゃないかな?
フルマラソンは激しすぎる(笑)。
――大会前後に高橋先生のタウトニングを受けていましたが、どこを重点的にしましたか?
心配だったのが膝と足首なのでその調整をしてもらいました。
故障しちゃったら動けないので。
当日の記憶
――当日は走っていてきつかったことや感じたことはありますか?
最初の10kmぐらいまでは気持よく走れましたね。
――おお! いけるかも! っていう?
うん。爽快な感じ。
――いつくらいまで社長と一緒だったんですか?
5kmで飯田橋で皆にあって、その後の給水で見失っちゃったんですよね。
それまでは意外に、ばらけてもまた会ったり。
――ああ! じゃあ、一緒に走ってたわけじゃないんですね。
うん。偶然。でも5km過ぎたら見失っちゃって「まあ、いっか」って。
――「まあ、いっか」(笑)。
お互いのペースで走った方が良いのかな、って思ってたので。
――10km過ぎてからはどうだったんですか?
10km過ぎてからは途端に苦しくなって。
20km過ぎてからは足が上がらない感じでした。
だから門前仲町の往復はすごく辛かったですね。
もともと坂道は歩いて登ろうと思っていたので、歩いては走るの繰り返しをやってたんだですけど、周りの観客から「歩いてないで走れよー!」とか。
――ああああ。いらんことを!
「そんなこと言ったらかわいそうじゃない」って隣のお母さんが言ってる声を聞いたりとか(笑)。
応援で「がんばれ」「がんばれ」って声をかけられるけど、「がんばれないよぅ」って思いながら走ってました。
――あー。
でもね、本当にね、知ってる人の顔を見るとすごい安心するんですよね。
「この辺にグッドクロスいるかなー?」って見渡して旗が見えると、かっこつけてるわけじゃなくて元気が出て走れてしまうっていう自分がいましたね。
――じゃあ、もう20kmで足が上がらなくなってからは。
ほとんど歩いていたと思います。
ほとんど歩いて、ちょっと走ろうかなと思って走って。
25kmが過ぎて品川の往復のときには、たぶん皆足がきついんだろうね、エアーサロンパスのところに人が殺到して。
「もうエアーサロンパスありません」って公式の人が言ってて。
だから、ほとんど周りの人たちに頼ってました。
――ほうほうほう。
あと、食べ物が全然なかった!
――期待してたのに!
そうそうそう。
ちょっと愚痴になっちゃうんですけど、食べ物がないとボランティアの人が前に出て「がんばれ、がんばれー!」ってやってくれるんですね。
その姿が見えると「ああ、食べ物無いんだ……」ってがっくしきてました(笑)。
まあ、考えたら3万人以上が走るわけで、そんなに用意できないよね。
――差し入れの海苔巻はれい子さんチョイスだったんですよね? あれは中身は何だったんですか?
あれはね、かんぴょう。あれは美味しかったですね。
――私が撮った写真は大体れい子さんがかんぴょう巻きをくわえてる写真でした(笑)。
ははははは(笑)。
以前、ハーフマラソンを走り終わったときに、すごくご飯が食べたくなったので炭水化物を摂取しようと思って。
ご飯の力はすごいです!
――食べた後にのどが渇いたりとかはしないんですか?
あー。かなり長い間食べながら歩くので、そんなにのどは乾かないですね。
あと、給水所は頻繁にあるので水分補給には苦労しませんでした。
――ゴールをしたときはどういう気持ちでしたか?
ゴール自体は、テープを切るわけじゃないんですけど、フィニッシュって書いてある門をくぐるのはやっぱり嬉しかったですね。
「ああ、もう走らないでいいんだ」って(笑)。
――(笑)。
走り終えて
――完走はできると思ってましたか?
思わなかったですね。やっぱり後半が考えられなかったです。
「ハーフ走れたら走れるよ」とか言われるけど「この倍か!」と思うと走れる気がしなかったです。
――ゴールした後、歩いて駅まで向かったんですよね。
あれがすごいきつかったですね。しばらく座って休んでました。
道路が横断できないから地下の階段を上り下りしなくちゃいけないし、ちょっとずつしか進めなくて。
――寒かったりしなかったですか?
寒かったんですけど、大会側からフリース等をもらえたので堪えられないほどではなかったですね。
マラソン後半の歩いてるときの方が寒かったです。
――やっぱり体を動かしてないと冷えますよね。合流した後は息子さんが車を運転をして帰ったんですよね。
もう決まった時から「絶対誰か迎えにきてね!」って。
去年の加瀬ちゃんを見てるから終わった後は絶対に動けないと思って。
――あの後電車で帰るのは鬼のように辛いですよね。
うん。まあ、皆そうやって帰ってるんでしょうけどね。
――25kmしか走れなかったとはいえ社長は元気に交通機関を利用しつつ、飲んでいらっしゃいましたが。
社長は余力があったと思いますよ。全然違うもん。元気さが。
実はゴール直前に社長が応援に来てくれてたんですよ。
――時間切れで回収された社長が(笑)。
私、走ってる途中、怖くて聞けなかったんですよ。
私でさえギリギリなのに、社長は大丈夫なのかって。やばかったかなあって。
「駄目だった」って聞いたら自分も心が折れそうで。
――あー。
だから最後に社長の姿が現れたときに元気そうな姿に安心しつつも、「やっぱ駄目だったかー」って。
――もっと早い段階で社長が応援しにきていたらどうなっていたと思いますか?
心が折れてたと思います。途中で分かったら私も辞めちゃってたかもね(笑)。
――翌日は布団から起き上がれなかったと聞いたのですが。
もう午前中ずっと寝てた。
――やっぱり翌日にてきめんに来るんですね。
じっとしてると駄目っていいますよね。
――かといって動き続けられませんもんね。
うん。でもマラソンやってる友達から「プールに行って体を冷やしな」っていうアドバイスをもらっていたので夕方にスパに行きました。
熱いお湯に入って冷たいお風呂に入ってを繰り返してました。
――終わった後に食べたいものとかはあったんですか?
いや、食欲がなくなっちゃって。そこまで元気がなかったです。
夜も余り物を食べてたと思います。
――またマラソンイベントがあったら走りたいですか?
来年、誰かが走るのであれば全力で応援します!
――今はとりあえず走る気はない、と。
そうですね。でも、「必ず走らなきゃ」っていうプレッシャーがないなら走れるかもしれませんね。
――来年は応募はするんですか?
応募はしますよ。一応13人集まんないと一人も当たらないかもですし。
――また当たっちゃったら?
大笑いですね。
でも練習してるときって体調いいじゃないですか?
肩こりが少し改善されたり。
あと、練習期間はすごい食欲で色々食べてたから、運動をぱたりと止めちゃうのは恐ろしい気が……。
やっぱりちょっとずつは続けたいですね。元々健康プロジェクトですし。
だから社長が今年走れなくて、来年に持ち越すのは「当たり」だったんじゃないかと(笑)。
――社長がその気になったのが一番の成果ですよね!
そうだね(笑)。びっくりだよね。
最初、社長と二人で当たった時に「社長を飽きさせないためにはどうすればいいだろう?」って考えたんですけど。
――蓋を開けてみたら。
飽きたのは私だった(笑)。
――無事に終わってよかったです。
そうですね。全体的に楽しかったし、「できるんだ!」って自信にもなりました。
応援の場所も心が折れそうな適所に配置されてて、「もうすぐ皆がいるかも!」って思うと足が動きました。本当にありがとうございました!
――いえいえ。れい子さん、本当にお疲れ様でした。インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!
次回、連続インタビュー「未完走の感想2018~社長の場合~」乞うご期待!