内田絵梨
3月3日はひな祭り。
特に女の子のお子さんのいる家庭では、雛人形を飾ったという方も多いのではないでしょうか?
赤い段々のひな壇にきらびやかなお人形が並んで、それが全て自分のために用意されたものだと誇らしかったものです。
今日はそんなおひなさまにまつわるお話。
うれしいひなまつり
♪おだいりさまとおひなさま ふたりならんですましがお
皆さんご存じ「うれしいひなまつり」という童謡の歌詞です。
この歌詞を聞くと、ひな壇の最上端の男雛を「おだいりさま」、女雛を「おひなさま」を呼ぶように思いますが、実はこれは誤り。
本来はひな壇の最上段にいる男雛と女雛の一対を「内裏雛(だいりびな)」と呼び、ひな壇すべての人形を「お雛様(おひなさま)」と言います。
この歌詞を作った童謡作詞家のサトウハチローさんはこの間違いを後々まで恥じていたそうですが、我々にはもうすっかり馴染んでいますよね。
ちなみにサトウハチローさんは戦後の大ヒット曲「リンゴの唄」を作った人でもあります。
どうりで「うれしいひなまつり」は耳馴染みのよい歌詞なわけです。
桃の節句
ひな祭りは正しくは「上巳(じょうし)の節句」。
上巳とは、旧暦3月の最初の巳の日という意味ですが、後に日付が変更しないよう3月3日に固定されました。
さて、旧暦ということは今の太陽暦とはズレが生じるということ。
今年(2020年)を旧暦でみてみると、旧暦3月3日は3月26日に当たります。
一ヶ月弱ズレがあるわけです。
そして上巳の節句の別名は「桃の節句」。
桃の花の見頃は3月の下旬から4月上旬にかけてなので、旧暦で数えるとずばり桃の見頃に重なるのです。
日本の花は冬から春にかけて梅が咲き、続いて桃が咲いて、桜が咲くといったリレーが毎年行われているのですね。
雛人形はいつ片付ける?
3月3日にひな祭りを楽しんだ後は、雛人形を片付けなくてはなりません。
「いつまでも雛人形をしまわないと婚期が遅くなる」という言い伝えまであるほどです。
これは、雛人形のルーツが厄を引き受ける人形(ヒトガタ)であったことが由来とされます。
日本では古来より、紙や草木で人の形をかたどり、それで自身の体をなでることで厄を移し、邪気を払うという風習がありました。
特に節句は季節の変わり目で体調を崩しやすいため、男女問わずこういった厄払いを行い人形(ヒトガタ)を川に流したのです。
現在でも各地で「流し雛」を行っていますよね。あれが雛人形の原型とされています。
さて、そんな厄を引き受けてくれる人形をいつまでも出しっぱなしにしておくことは、お雛様がせっかく引き受けてくれた厄が戻ってくることに繋がると考えられていました。
また、女性の幸せ=結婚することだった時代、娘を嫁に出すことは親の義務でもありました。
そしてその娘を他家に嫁がせることを「片付ける」と言いました。
雛人形を片付けないと、厄が戻っていつまでも娘が片付かなくなる、とこんな具合の連想ゲームです。
実際には、雛人形などを扱う人形専門店では、日付に関わらず雛人形はなるべく晴れて乾燥した日に片付けるよう勧めています。
一度片付けると一年はしまっておくものなので、なるべく湿気を避けて保管するのが良いそうです。
なお、一つの目安としては、新暦でひな祭りを祝う場合は3月中旬までに。
旧暦で祝う場合は4月の中旬くらまでにしまうのが一般的です。
どちらもひな祭りから2週間以内ですね。
また一説には雛人形をしまうのにベストの日は「啓蟄(けいちつ)」だというものがあります。
啓蟄とは一年を24等分した二十四節気(にじゅうしせっき)の一つで、土の中で冬ごもりしていた虫たちが目覚める頃。
今年(2020年)の啓蟄は3月5日でもう終わってしまいましたが、啓蟄は期間を表す単語でもあるため、3月5日から3月20日の間の天気が良い日に片付ければ胸を張ってよいのではないでしょうか?
今週末は雨の地域が多いので、来週末の天気が絶好の雛人形片付け日となるよう祈ります。