植村明美
懐紙は現在では主に和装の際や懐石料理などの改まった和食の席、また茶道の時に使用することが殆どですが、その他の時にも色々と応用がききそうです。
お茶席では菓子を取ったり指先や茶碗をぬぐったりするのに使われるようですが、お茶席でなくともちょっと残ってしまいそうなお菓子を包んだり、メモ代わりに使ったり色々と使えますね。
懐紙を常に持ち歩くという人はそうそういないかもしれませんが、常に持ち歩いて損はないどころか品格を感じさせる素敵な小道具かもしれません。
懐紙はかいし、ふところがみ、たとう紙ともいい、もともとは料紙のことです。
料紙というのは和歌や俳句を清書する紙のことで、これを懐中に忍ばせたことから懐紙と呼びました。
また平安時代、貴族の宮廷公事でメモ用紙のように使われていた礼紙といわれる紙があり、その代用としても使われていました。簡単な文を書く便箋としても用いられました。
懐紙は料紙を懐中に束ねた紙を携帯したことにちなんで生まれた言葉ですが、和歌や俳句など書かれた作品そのものも懐紙と呼ばれました。
平安末期の歌の名人として名高い西行ほか筆一品経和歌懐紙、鎌倉初期の後鳥羽院ほか筆熊野懐紙などは特に名高く有名です。
懐紙の寸法も身分によって決められており、各家々による違いもあったようです。
男性と女性でも違いがあり男性用は白のみであるが女性用には色つきや絵柄が入ったものがあります。
今日使われている懐紙は一般的に男性用が17.5×20.6 cm程度、女性用が14.5×17.5 cm程です。
また貝敷き→カイシキ→カイシ→懐紙となったという説もあります。
貝敷きは器。お皿代わりに昔は貝の食器が使われたことから、その貝の代わりですよ、貝に見立てた食器代わりに紙を用いたことからという話です。
いつも懐に入れて携行するため、ハンカチやちり紙代わりともなります。
懐紙入れも素敵なものが色々出ていますので、懐紙の色や柄と組み合わせてみるのもお洒落ですね。
袱紗や風呂敷にしろ、懐紙にしろ、1枚の布や紙を色々応用させて使うという日本人のミニマリスト的な知恵や工夫はすごいなと思います。
出典、参考
小学館 日本大百科全書
大辞林 第三版
ブリタニカ国際大百科事典