内田絵梨
「ず」と「づ」、「じ」と「ぢ」。
どちらを使えばいいか分からなくなることはありませんか?
お恥ずかしながら、私は混乱することがしばしばあります。
今回取り上げるのは「ずつ」と「づつ」について。
皆さんは「少しずつ」「少しづつ」や「一個ずつ」「一個づつ」など、どのように書きますか?
「ずつ」と「づつ」の意味
国語辞典で調べてみると、「ずつ」はこのように記されています。
ずつ[づつ]
[副助]数量・割合を表す名詞・副詞、および一部の助詞に付く。
1. ある数量を等分に割り当てる意を表す。「一人に二本ずつ与える」「五〇人ずつのクラス編成」
2. 一定量に限って繰り返す意を表す。「一ページずつめくる」「少しずつ進む」
[補説]「一つ」「二つ」の「つ」を重ねたものか。中古から用いられる。
デジタル大辞泉より
補足説明を見ると、どうやら「一つ」「二つ」の「つ」が重なって「つつ」となり、「づつ」に変化したのではないか、という説があるようです。
この説明からも分かるように、「づつ」という表記の方が歴史が古いものとなります。
「づつ」の歴史
ちょうど、「蝶々」を「てふてふ」と書いたように、実は「づつ」は歴史的仮名遣い(旧仮名遣い)でした。
歴史的仮名遣いから現代仮名遣いへの統一がすすめられたのは終戦直後の1946年(昭和21年)11月16日のこと。
時の総理大臣・吉田茂によって「現代かなづかいの実施」が告示されました。
曰く、「國語を書きあらわす上に、從來のかなづかいは、はなはだ複雑であって、使用上の困難が大きい。これを現代語音にもとづいて整理することは、教育の負担を軽くするばかりでなく、國民の生活能率を上げ、文化水準を高める上に資するところが大きい」とのこと。
こうして「づつ」は「ずつ」へと形を変えて使われるようになりました。
二度目の「現代仮名遣い」告示
ところが1986年(昭和61年)7月1日。第二次中曽根内閣時代にまたしても「現代仮名遣い」が告示、訓令されます。
そこにはこんな言葉が……。
(五) この仮名遣いによる表記の仕方は、従来の「現代かなづかい」(昭和二一年内閣告示第三三号)による表記と実際上ほとんど相違がないこと。ただし、「じ・ぢ」「ず・づ」の使い分けのうち、「せかいじゆう」「いなずま」などについては、「じ」「ず」を用いることを本則とするとともに、「ぢ」「づ」を用いることもできるものとしたこと。
(中略)
なお、次のような語については、現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等として、それぞれ「じ」「ず」を用いて書くことを本則とし、「せかいぢゅう」「いなづま」のように「ぢ」「づ」を用いて書くこともできるものとする。
例 せかいじゅう(世界中) いなずま(稲妻) かたず(固唾*) きずな(絆*) さかずき(杯) ときわず ほおずき みみずく うなずく おとずれる(訪) かしずく つまずく ぬかずく ひざまずく あせみずく くんずほぐれつ さしずめ でずっぱり なかんずく うでずく くろずくめ ひとりずつ ゆうずう(融通)
現代の感覚で一単語であると感じるもの、二語に分解しにくいもの等は、「じ」「ず」で書くことが原則ではあるものの、「ぢ」「づ」を使うことも許されているというのです。
そして、その例の中にはばっちり「ずつ」の言葉が入っています。
「づつ」と「ずつ」の歴史を見てみるとこういう形で区分できるでしょう。
1946年(昭和21年)以前 | 「づつ」 |
1946年~1986年(昭和21年~昭和61年) | 「ずつ」 |
1986年(昭和61年)以降 | 「ずつ」(づつ) |
「ずつ」と「づつ」の使い分け
1986年(昭和61年)の内閣訓示で示されているように、公的な書類を作成する場合やビジネスシーンにおいては「ずつ」という表記が求められます。
しかしながら、私的な手紙や、仲間内のやりとりであれば「づつ」を使っても特に問題はありません。
公私を使い分けて、プライベートな場では気分によって書き方を変えてみるのも乙かもしれませんね!
おまけ
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参考:TRANS.Biz