内田絵梨
習っていないのにいつからか自然と使っている文字ってありますよね。
私にとっては「人々」や「代々木」の「々」です。
よくよく考えてみると「々」は単体で何と読むのか知りません。
気付いたら「前の漢字の繰り返し」として使って、なんとなく読みやすさで濁点をつけたりつけなかったり……。(時々や刻々など)
こんなふわっとした文字って他にあるでしょうか。
今回は踊り字「々」についてのお話です。
「々」の読み方
PCで、単体で「々」という字を入力する際に、皆さんはどのように出しますか?
「日々」と打ち込んで最初の「日」を消したり、以前だったら「ノマ」と打ち込んで変換したり。
「々」は「同の字点」と言って、同じ漢字を重ねる際にその文字の代用として用いられます。
字点という名前から分かるように、漢字ではなく、句読点などと同じ、約物(やくもの)という特殊記号の扱いとなっています。前の字によって読み方が変わるため、特定の読みはありません。
「同じ字を繰り返す」という意味から「おなじ」や「くりかえし」、「どう(同)」でも変換することが可能です。
先ほど「々」を「踊り字」と紹介しましたが、同の字点は、約物の中で似た性質を持つ「ヽ」「ヾ」「ゝ」「ゞ」などと合わせて「踊り字」と称したりもします。
「々」の使い方の注意
同じ字が続いても「々」を使わない場合がいくつかあります。
平成29年3月29日に公布された 龍ケ崎市の公文書作成要領が分かりやすいので見てみましょう。
第7条2(12)
同じ漢字が続く場合は,繰り返し符号の「々」を用いることができる。ただし,「市役所所在地」,「民主主義」等関連がなく,同じ漢字が重なったにすぎない場合は,用いない。
「市役所/所在地」「民主/主義」など、意味が途切れる場合は「々」は使いません。「会社社長」などもそうですね。
慣れかもしれませんが、書き変えてみると途端に読むのが難しくなります。(市役所々在地、民主々義、会社々長)
しかしながらこれには例外があって、意味が途切れる場合でもあえて「々」を使うことがあります。
結婚式や葬儀に関しては、同じ漢字を直接繰り返すことが再婚や不幸の繰り返しを連想させるため、通例として「結婚式々場」や「告別式々場」と表記することが多いそうです。
使い方には少し注意を払わなくてはなりませんね。
また、「々」は約物のため、単語の途中で行をまたがってしまうときには用いることができません。「人人」や「日日」といったように、「々」で省略することなく書く必要があります。
ただし、人名の「佐々木」や地名の「代々木」のように固有名詞となっているものに関してはこれは当てはまりません。
知らず知らず使っているからこそ、改めて使い方のルールを知ると、新たな発見があって面白いですね。
来週は、現在ではあまり使われなくなった、平仮名や片仮名を2字重ねるときに用いる「一の字点」と、縦書きの文章で同じ単語を繰り返すときに用いる「くの字点」についてお話します。
乞うご期待!
参考:公用文作成の要領 / 漢字辞典オンライン