植村明美
俳句の世界には、普段生活していても殆ど使わなかったり、今まで知らなかった言葉が溢れています。ほんの一部ですが幾つかをご紹介しましょう。
ふらここ
ふらここ、鞦韆(しゅうせん)といえば春の季語でぶらんこのことです。
ぶらんこと呼ぶよりもなんとなく可愛らしく、上品な空気を纏った言葉の気がいたします。
竜田姫
秋の季語として俳句をしていて初めて知った言葉として「竜田姫」があります。
春をつかさどる佐保姫に対して、秋をつかさどる竜田姫は平城京の西にある竜田山を秋の女神にたとえたものと言われています。
「竜田姫たむくる神のあればこそ秋の木の葉の幣と散るらめ」 兼覧王
と古今集に詠まれたように、紅葉にかかわる女神でもあり、葉の色を染めていくというところから染色や裁縫に秀でている姫なのです。
対する佐保姫はというと奈良の東にある佐保山、佐保川の女神で、春の野山の造化をつか さどるといわれる。佐保姫は霞 の衣を織り、柳の糸を染め花を咲かせる女神ということで、やはり染色に秀でた存在です。
この時代はお姫様といえども、良い妻の第一条件は染物が上手であることだったそうです。
小鳥来る
小鳥は一年中いつだって来るし、どちらかというと、卵からかえったばかりなのだから季語があるとすれば春かもしれないと思いますが秋の季語です。
ここでいう小鳥はつぐみやひわなどの秋に渡ってくる鳥のことを見て言った言葉です。
小鳥来る音うれしさよ板庇 蕪村
紅葉かつ散る
紅葉かつ散るは紅葉しながら散っている様子を言います。
一枚の紅葉且つ散る静かさよ 高濱虚子
後の月
後の月は旧暦8月15日が中秋の名月なのに対し旧暦9月13日の夜の月を十三夜または後の月と言います。中秋の名月とセットで見るのを良しとし、どちらか片方しか月見をしないのは方月見と言って縁起が悪いとまで言われたほどでした。
しかし、方月見が縁起が悪いというのは江戸でしか言われていないようで、元々吉原では月見の時には普段より一層お客の金払いが良く、そこに目をつけた吉原の営業戦略だったようです。
虎落笛
虎落笛は「もがりぶえ」と読み、真冬にヒューヒューと音をたてて風が吹き抜けて行く様子を指します。
虎落(こらく)とは竹を立てて作った物干しで、それが強い風に吹かれて笛のように音を立てることになぞり、真冬の風の通り抜ける音をこう呼ぶようになりました。
モガリ笛いく夜もがらせ花ニ逢はん 檀 一雄
さいごに
季語に通じるような美しい花々をあしらったはがきや名刺も販売しています