植村明美
毎年6月の30日になると今年の前半、私たちについた罪や汚れ、いわゆる穢れを落とし、ここまでの半年を無事生きたことを感謝し、あとの半年の無事を祈る夏越の大祓が行われます。
神社によってはチガヤで作られた茅の輪を設置したり、形代に自分の息を吹きかけて流すことで穢れを払ったりしているところもあります。
茅の輪は正面から入って左に回り、その後また正面より今度は右へと八の字に回る独特の方法でくぐることにより、穢れを払うと言われています。
そもそもこの神事はどうして行われるようになったのでしょうか。
なんとご実家が広島の神社であり、神職でもあるグッドクロスのコールセンター事業部部長、南條さんに聞いてみました。
「起源については諸説ありますが、記紀神話の伊弉諾尊(イザナギノミコト)に由来すると思われます」
イザナギノミコトのお話というのは、聞いたことがあるもののうろ覚えだったので、もう一度調べてみました。
亡くなってしまった奥さんであるイザナミノミコトに会いに黄泉の国に行ったものの、絶対に見ないでと言われたのにも関わらず見てしまったイザナギノミコトは黄泉の国からこちらの世界へ戻ってきます。
その時に、自分は汚い世界に行って穢れてしまったので禊をしないといけないと言って海に入られたという、このことが始まりのようです。
因みにその時に左目を先ず洗われて、天照大御神(アマテラスオオミカミ)がお生まれになり、続いて右目を洗ったときに月読命(ツキヨミノミコト)鼻を洗ったときに須佐之男命(スサノオノミコト)が生まれたということです。
そして、大祓には茅の輪をくぐる風習があるのですが、それにはやはり南條さんに以前伺った蘇民将来の話が少し関係してくるようです。
その昔、旅の途中である兄弟に宿を求めた神がいました。
裕福な兄の巨旦将来は、そのみすぼらしい姿を見て泊めることを拒みましたが、貧しくも心清らかな弟の蘇民将来は神であることは知らないまま、お泊めして心からのもてなしをしました。御札を渡された蘇民一族は、以来疫病や災厄を逃れたと言います。
神の名は牛頭天王(ごずてんのう)。スサノオノミコト、薬師如来とも言われ篤い信仰を集めてきました。
この御礼というのが茅で作った小さな飾りであって、それを蘇民一族が身に着けていたとも言われていることから、茅の輪をくぐるようになったという説があるようです。
また、
水無月の 夏越の祓する人は 千年のいのち 延ぶといふなり
詠み人しらず(拾遺和歌集)
という歌があることから、水無月といわれる、白い三角のういろうに小豆がのった和菓子を食べる風習のある地方もあります。
この歌に由来するほか、昔、平安貴族は冬の間にできた氷を運ばせて夏に食べて暑気払いをしましたが、これにこのお菓子が似ているからであるとか、小豆にお祓いの意味があるからなどと言われているようです。
東京などでは浸透していない習慣ですが、昔はなかった節分の恵方巻きのように、全国に広がっていくかもしれないですね。
神社では6月と12月に毎年行われる大祓ですが、新型コロナウィルスという、今まで全く体験したことのない未知のウィルスとの闘いの途中である今年は、氏神様などに是非伺っておきたいものです。
さいごに
私達は言葉の意味や力を大切に考える会社です
出典:日本の神話古事記
学研M文庫 古事記 増補新版 梅原猛