内田絵梨
昨日、関東地方で過去最早で「春一番」が観測されました。
春の訪れを感じてウキウキする言葉ですが、実は用心した方がよいこともあるようで。
今回はそんな「春一番」についてのお話です。
春一番の基準
「春一番」の発表の目安は各地方ごとに少しずつ違うそうですが、関東地方の基準は次の通り。
1)立春から春分までの期間に限る。
2)日本海に低気圧がある。低気圧が発達すればより理想的である。
3)関東地方に強い南風が吹き昇温する。具体的には東京において、最大風速が風力5(風速8.0m/s)以上、風向はWSW~S~ESEで、前日より気温が高い。(なお、関東の内陸で強い風の吹かない地域があっても止むを得ない)
関東地方の春一番 気象庁天気相談所作成より
「春一番」が認められる期間が決まっているため、発生しない年ももちろんあります。
逆に、2013年2月2日には温かい南風が吹き込んで全国的に気温が上がりましたが、立春の前であるために「春一番」であるとは認められませんでした。
あくまで気象庁の基準を満たす春一番が吹いたのは、1951年の観測開始から5年後の1956年の2月7日です。
今年は立春が2月3日だったので、立春の翌日に観測されたことになりますね。
春一番の語源
さて、皆さんは春一番の語源をご存じですか。
諸説ありますが、春一番は昔から石川県能登地方や三重県志摩地方から西の地方で船乗りが使っていた言葉とされています。
なぜもともと漁師が使っていた言葉が気象用語として使われているのでしょうか。
それを紐解くには、江戸時代に春一番が起こした痛ましい事件を知る必要があります。
1859年2月13日のこと。
壱岐郷ノ浦の漁師53人は五島沖で漁をしていました。
そこへ急に強い風が吹き荒れます。
突風によって船は転覆し、結局53人全員が死亡しました。
当時、春の初めに強い南風が吹くことは漁師の間ではよく知られ、「春一」「春一番」と呼んで恐れていたそうです。
実は春一番が吹くと海が大荒れとなり、海難事故が発生する可能性が高まるのです。
そのため、気象庁が発表する「春一番」は、春の訪れを告げながらも、急発達する低気圧をお知らせする注意喚起でもあるのです。
春一番が吹くと季節外れの暖かさとなりますが、低気圧の通過後は冬型の気圧配置になってしまいます。
日本海側では雪や雨、各地の気温もその時期らしい寒さに逆戻り。
「三寒四温」、「暑さ寒さも彼岸まで」とは言いますが、気温が安定するまではどうぞ皆様お身体に気を付けてお過ごしください。