植村明美
5月21日は二十四節気の小満です。
毎年大体5月21日前後ですが若干の変動があります。
この日一日ではなく、次の二十四節気である芒種までの期間を指して言う場合もあります。
江戸時代、太玄斎により書かれた「こよみ便覧(こよみべらん)」という書物に、「小満、四月中」として
「万物盈満えいまんすれば草木枝葉繁る」と記されています。
「全てのものが満ち溢れると、草木、枝葉が繁る」すなわち、草や木などの植物、農作物がすくすくと成長して生茂る時という意味になります。
日差しが強くなり、全ての植物が大きく成長する時期を指すのでしょう。
特に江戸時代の日本では、農作物を税として納めていたわけですから、収穫に関わることは人々の大きな関心ごとであったに違いありません。
また、日本は米作が基本とはいえ、地域によっては米が作りにくいために麦を主に作っていた場所もありますが、麦の収穫期は米とは違いこの時期になります。
俳句の季語にも「麦の秋」という言葉がありますが、これは「秋」ではなく、麦の収穫期を意味するもので、5~6月、初夏の季語となります。
昨年撒いた麦の種が金色の穂をつけて揺れる様子を見てほっと安心し、少し満足した気持ちになることから「小満」という名前が付いたという説もあるようです。
けれど、この時代の収穫と農家の人の気持ちを考えますと、少し満足ではなくて、大層満足して「大満」になりそうです。
先日放送された大河ドラマでも、渋沢栄一が、御代官の容赦ない年貢の取り立てに憤る場面がありました。
その当時は、御上への年貢が最優先ですから、本当に沢山の収穫を望んでいたことと思いますし、収穫量は生きるか死ぬかということに直結していたように思えます。
また、二十四節気のその他の名称を見ると、「小寒」「大寒」「小暑」「大暑」「小雪」「大雪」と必ず大小対であります。
小寒は寒くなり始めで、大寒は寒さの一番強くなる時期であるように、どの時期も始まりとその真っ只中という意味であるように思えます。
そのことから考えると、なぜ「大満」がないのかという新たな疑問は残りますが、「小満」も植物が生い茂り、収穫物が満ちあふれだす時ということかもしれません。
小満を過ぎると次の二十四節気は「芒種」種まきの時期となりますが、次の記事では二十四節気について説明いたします。