内田絵梨
甘酒といえば、初詣の時に神社で振舞われ、凍えた体を温めてくれる飲み物というイメージを持っている方も多いでしょう。
しかしながら、俳句の世界では甘酒は夏の季語なのです。
甘酒の歴史
甘酒の歴史は古く、その起源は古墳時代までさかのぼるとされています。
『日本書紀』の神代の巻の下には木花開耶姫(このはなさくやひめ)が彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)を出産した際にお祝いとして作った天甜酒(あまのたむざけ)が出てきます。
この天甜酒(あまのたむざけ)が甘酒の原型であり、日本酒のはじまりと言われているのです。
甘酒の種類
甘酒には米麴と酒粕の2種類があります。
その違いは下記のとおりです。
米麹の甘酒
お粥と米麹を混ぜて醸したもので、一晩で作れるので「一夜酒(ひとよざけ)」とも呼ばれます。
ノンアルコールのため子どもから大人まで誰でも飲むことができる甘酒です。
お米のでんぷんがブドウ糖やオリゴ糖に変化するため、自然な甘みがあります。
酒粕の甘酒
酒粕の甘酒は、酒粕を水で溶き、砂糖を加えて作られたものです。
元となる酒粕は、米麹に酵母菌を加えて発酵させて作られたものであり、栄養価がとても高いと言われています。
ただし、お酒を造ったときの副産物であるため、微量ですがアルコールが含まれます。
先に紹介した天甜酒(あまのたむざけ)は一夜酒のため、米麹の甘酒のルーツとなります。
一方の酒粕の甘酒が文献に見られるのは、『万葉集』巻五に載録されている山上憶良の「貧窮問答歌(びんぐうもんどうか)」です。
その最初はこんな風に始まります。
風雑(まじ)り 雨降る夜(よ)の 雨雑り 雪降る夜は
すべもなく 寒くしあれば 堅塩を 取りつづしろひ 糟湯酒(かすゆさけ) うち啜(すす)ろひて 咳(しはぶ)かひ 鼻びしびしに しかとあらぬ
訳すなら
風にまじって雨が降り、雨にまじって雪の降る寒くてたまらない夜は、焼き塩をなめながら糟湯酒をすすり、咳をしながら鼻をすする。
といったところでしょうか。なんともわびしい風景です。
ここにでてくる「粕湯酒」が酒粕の甘酒のルーツで、酒をしぼった残り粕である酒粕をお湯に溶いて飲んでいたとされます。
飲み方からも分かる通り、粕湯酒は庶民や下級役人の飲み物でした。
参考:神社本庁(甘酒) / 菊水(日本酒物語) / 農林水産省(甘酒には2種類の作り方があるとのことですが、ノンアルコールのものはどちらですか。2種類の違いも教えてください。) / カヤマ醸造所(甘酒の歴史) / marukome(甘酒の歴史・読み物)