内田絵梨
海外ドラマなどを見ていると、親が子どもに対してこんなフレーズを言うことがあります。
“You’re grounded!”
外出禁止を表す英語表現です。
対する日本の場合はというと、親が子どもを叱る際は、「出て行きなさい!」という表現がよく使われるのではないでしょうか。
今日は、この差について考えてみましょう。
外出禁止だ!
外出禁止は自由を奪うことです。
行動を制限し、自分が管理できる場に押しとどめる。
子どもを自立した個として考え、自由を奪うことこそが罰なのです。
その感覚からすると、逆に、「出て行きなさい!」というセリフは、子どもに自由を与えることとなります。
全然罰則にならないし、外で問題を起こされても困ることから、そもそも叱る場面で「出て行きなさい!」という言葉をいう発想自体がないのです。
出て行きなさい!
対する、「出て行きなさい!」は追放です。
このセリフを言う親の本心としては、子どもが出ていくことを本当に望んでいる訳ではありません。
それでも、「ウチの人間ではない」と突きつけ、脅します。
この言葉の根底には、「ウチ」と「ソト」という概念が潜んでいます。
簡単に言うと、「ウチ」は身内・仲間の意味で、「ソト」は余所者・他人を意味します。
自分が属する大小様々な共同体。その中でも、核ともなりうる「家族」から爪弾かれることを、日本人は恐れます。
「外に出ること」は自由ではなく、「ウチ」からの追放であり、子ども心にそれを恐ろしく思うのです。
また、昔のお仕置きの仕方として、(今だと虐待になるのでしょうが)子どもを納屋や押し入れに閉じ込めるというものがあります。
この感覚も、海外の「外出禁止」とは異なり、ウチとの隔絶。加えて、ソトとの隔絶が根底にあります。
どの共同体にも属せない状態は、最も恐るべき罰の一つと言えるかもしれません。
ちなみに、この「ウチ」と「ソト」は、全く同一とは言えないものの、中国や韓国にも似たようなが概念があるそうです。
どのような叱り方をするのか、調べてみると面白そうですね。
フィリピンにいるスタッフに聞いたところによると、同じアジア圏であるフィリピンでは、叱る場合は「外出禁止」がよく持ちだされるようです。
フィリピンが英語圏だからなのか、日本が特殊なのか……。
謎は深まるばかりです。